生殺与奪権は他社に与えない

京都太陽行政書士事務所 希少性は立派な強みになります 投稿記事

 創業時に、「買い叩かれても大手の下請けとして奉仕する」、という企業理念を建てた社長さんは皆無だと思います。企業は独自に生きてこそ。会社の存続のために、社員のためにと妥協してしまう日々。資金繰りが行かなくなって、やりたかったことと違う日常に疲れる前に、室町時代に創業した 老舗の生菓子店の話題をもう一つ。
 その店は、連日続く裏千家家元主宰の初釜の生菓子を独占している老舗です。
 30年ほど前の第15代当主は、ちょっとシニカルでウイットに富んだ文才も立つ方で、「和菓子の京都」と言う岩波新書も出版されていました。
 今は絶版となっているその本には、①御所が荒れて宮中に食べ物がろくになかった戦国時代に毎日餅を献上した為に、御所にその店の名前の門ができた話、②粽や葩餅の成り立ちの経緯、③味・品質を変えないために、あえて手間がかかる製法を遵守するという老舗の匠の心意気、④西本願寺も店も経緯がわからないが今更どちらもがやめられないという1月の粽の納品、⑤京都人気質が形成された経緯、⑥明治天皇の東京行幸の際、御所出入りの店もこぞって東京に行ったが、その店は作り方だけ教えて味のわかる人のいる京都に戻った話などが書かれた本でした。
 その店には、1年に1日だけ、「12月1日限定」で注文できる生菓子がありました。知る人ぞ知るその日は何度電話をかけてもつながらない状態です。注文日は12月1日ですが、販売されるのは年末近くになります。裏千家家元主催のお茶会は各界のトップでないと招待されない為、初釜の生菓子の「試作品」を作るのでお分けしますという形で庶民にも手に入るように工夫されているのですが、競争率が高くてなかなか手に入りません。
 また、この店は粽も販売されているのですが、他の店は、他県の笹を1ー2枚しか使わず、材料も米粉を使って、手軽に蒸して作るのに対して、その店は、京都の決まった地域の香りの良い笹だけを6-7枚使い、吉野葛100%を使って、長時間茹でるという時間のかかる方法にこだわっています。
 行幸の際、東京に残った虎屋の規模と比べると、素通りしてしまうような小さな店構えですが、こういうこだわりが、固定の厚いファン層を作り出しています。今は、なかなか生菓子が手に入らない人のために、毎月季節の生菓子を販売されていて、結構人気のようです。私も昔、WEBクリエーターの実習の際は、その店の「勝手にホームページ」まで作ってしまうほどでした。
 2回にわたり、生菓子店の話をしましたが、この話は生菓子の老舗だから顕著ではあるけれど、製造業であっても参考になるのではないでしょうか。
 よく、2-8の原理などと言いますが、それは、大手との取引割合が2割で、売上げの8割を占めるという形だけのことを意味するのでしょうか? 大手に追従して中国進出の無駄な出費を余儀なくされ、部品の値段を買い叩かれという場合、売上げの8割は利益の8割と合致しているのか、利益率でいけばもっと違う取引先が浮上するのではないか、ということを事業主は再計算してみるのも大切かもしれません。
 自己の「生殺与奪権」を他社に委ねないような工夫を考えるのも経営者の仕事です。
 昔、松下幸之助の繁栄の裏で、松下のみに依存する門真市や寝屋川市の中小零細企業で、首を吊った社長さんは結構多くおられました。今は、それに外資の乗っ取りも加わります。松下の下請・孫請企業の社長のようにグローバル企業の喰い物にされないためにも、アンテナの横軸の広さと共にアンテナの時間軸の長さも大切ではないでしょうか。
 30年続く企業が0,3%と言われる中で、京都の老舗は100年レベル程度の薄っぺらさではありません。室町〜江戸と為政者が次々代わった時代、戦国や幕末や明治の動乱期や戦争、大地震、食料のない終戦も生き延びて数百年も続く老舗の知恵に、貴社で使えそうな発想がないか探してみると意外と良いアイデアが浮かぶ可能性があります。アンテナは同じ業界に張るのではなく、異なる業界に張ることが大切です、そこに多くのヒントがはずですし、そこから見つけたヒントは、同業者はどこもしていない事なので、貴社独占の方法になります。
 グローバルな価値観に汚染された脳に、老舗の逆転の発想は起死回生の一手になるかもしれません。

©️ 2023   京都太陽行政書士事務所

PAGE TOP
タイトルとURLをコピーしました