デジタル遺言制度の信頼度は?

京都太陽行政書士事務所 デジタル遺言制度は信頼出来るか 投稿記事

1. 自筆証書遺言書保管制度とは
 法務省民事局には、現在、自筆証書遺言書保管制度と言うものがあります。今まで自筆遺言書は、そのまま若しくは、公証役場で押印して貰った上で自宅などに保管しておく為、発見されない場合もあった事、公正証書遺言書を作成すると財産額によって手数料がかかってくる事から、一律3,900円で遺言書の保管をしてくれる制度です。家庭裁判所の検認も不要で、一応、外形的な不備を確認してくれ、通知人を指定しておけば、本人が亡くなった場合に、通知人に遺言書を保管していることを通知してくれると言うもので、全国の法務局で利用できるようになっています。(この制度についても色々疑問もありまですが、それはまたいつか・・)

2. デジタル遺言制度の新設
 ところが、この制度が、士業はともかく、まだ十分に一般の方に浸透していないにも関わらず、デジタル化を推進する流れにより、デジタル遺言制度が進められています。
 電子申請、マイナンバーと立て続けに制度の不祥事が発覚し、重要な個人情報が他人と紐付けされたり漏洩したりといった状況の中で、また、民間でもシステムへの攻撃などによって、企業の機密技術情報や個人の300万人近くのカード情報などが盗まれているような甘い日本のセキュリティー意識で、本当に遺言という究極の金額の多い情報を守れるのか疑問です。

3, 個人の資産情報漏洩や、内容を改変される危険性
 仮に、Aさんが、「Bさんに5,000万円、Cさんに8,000万円相続させる、会社経営権と会社の株式と不動産の全てはDに相続させる」というデジタル遺言書を作成した場合、CさんがXさんに改変されたり、「全財産をYさんに相続させる」と改変される危険性は当然あり得ます。
 なぜなら、デジタルデータには、絶対に漏洩しない保証はないからです。物理的に盗むしかない紙媒体と異なり、常に改変されたり、第三者に漏洩されたり、公開されたり、第三者のデータと混在したりということを避けることはできないのです。

4. 遺言が、他の個人情報と圧倒的に異なる点
 遺言は、全財産をもれなく把握できる上、財産そっくり盗めるとしたら、国内外のハッカーにとってこんなに美味しい犯罪もありません。法務局にはもちろん、かつての厚労省の年金問題の様に外国人に作業させて紐付け出来なくなったりといった問題や、スパイも入ってくるでしょう。
 もっと言えば、政府ももちろん内容を監視してくると思われます。

5. 法務省はともかく、法務局職員も全貌は把握していない
 おそらく、保管制度を作った途端、次はデジタルと言われた法務省も、日々細かな詰めや調整で大変だろうとは思います。安全担保のために公証役場を使うとか、いろいろ模索中のようです。
 ちなみに、厚労省には全ての個人の医療・年金・保険情報や、全国の休職者や企業の情報が集まっていますが、今のところ情報漏洩していません。
 これは、LINEやZOOMなどホストコンピューターが中国にあるようなソフトを一切遮断し、外部メールを禁止したり、LINEなどを使う自治体との回線はつながない、検索はイントラネット、仮想空間を使うなど工夫をしているだけでなく、システム担当職員が常に全国を回って脆弱なところを改善、しかも2-3年おきにシステムをそっくり変更するという工夫をしているからです。

6. 情報リテラシーの大切さ
 京都の人は案外新しい物好きですか、少なくとも、ここまでの対策ができていない官庁や地方自治体(特に、LINEやZOOMを多用している京都府は要注意で、京都テルサではセキュリティーソフトが入っていない時期もありました)、企業、個人の方は、ご自身の会社や個人データのみならず、ご自身が登録している取引先や友人のデータまで盗まれていると思われた方が良いと思います。
 そう言うと、よく、「私は盗まれて困るような個人情報はないから」と言う方が結構多いのですが、カード情報、暗証番号、銀行口座、預金残高、株式銘柄、不動産、病歴、通院記録(カルテ)、よく行く店、家族情報、通話記録、メール内容、支払い税金額、、、全て盗まれていますよ、と言うことです。
 情報リテラシーが甘い人とのLINE友達申請は、その人から自分のデータも盗まれることになるので要注意です。

7. デジタル遺言制度、利用する?しない?
 さて、来年度、デジタル遺言制度が開始されたら、ご利用されますか? 日本の官僚は優秀ですが、少なくとも1-2年は様子を見てからでも良いような気がします。

©️ 2023   京都太陽行政書士事務所

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