遺産分割協議書の書き方

京都太陽行政書士事務所 遺産分割協議書の作り方 投稿記事

1. どの様な時に遺産分割協議書が必要か
 親などが亡くなると、、遺産を相続人でどの様に分けるかということが問題になってきます。不動産があって名義変更が必要な場合や、口座凍結した預貯金がある場合、株式の名義変更、自動車(軽自動車や査定額100万円以下は不要)や船舶の名義変更をする場合、相続税を払う必要がある場合は、「遺産分割協議書」が必要になります。

2. 遺産分割協議書って何?
 遺産分割協議書とは、相続人全員で遺産の分割の仕方を協議し合って、決定した内容を記載した書類のことです。それで、「遺産分割協議書」という名前になっています。遺産分割協議書は、相続人全員が合意して作成する必要があります。

3. 遺言書がある場合はスムーズ
 公正証書遺言や検認済の自筆証書遺言書があったり、法定相続分通りに分ける場合、相続人が1人しかいない場合は、遺産分割協議書は原則は必要ありません。 
遺言書がなかったり、遺言書があっても納得いかずにもめたりした時は、遺産分割協議書が必要になります。

4. 準備するもの
 被相続人(亡くなった人)の生まれた時から亡くなるまでの全ての期間の戸籍謄本(除籍謄本)と、相続人全員の戸籍謄本が必要です。
相続人の印鑑証明と、本籍の記載のある住民票も取っておきましょう。
遺産に不動産があれば登記簿を取ります。また、預貯金の口座番号なども調べておく必要があります。

5. 用紙やペンについて
 遺言書とは違って、手書きである必要はなく、パソコンで作った方が楽です。自筆の署名、実印押印は必要です。用紙は、便箋でも和紙でもコピー紙でも構いません。
用紙サイズには、特に決まりはありませんが、A 4 サイズで 2 枚になる場合は、A 3サイズで作った方が割印がいらないので楽です。手書きの場合、筆記具は、ボールペンでも筆でも構いませんが、鉛筆やフリクションペンは使えません。

6 では書いていきます
基本形は、こんな感じになります。

              遺産分割協議書     
     被相続人  日本太郎(令和〇年〇月〇日死亡)     
     最後の住所    京都府京都市左京区◯町00丁目     
     最後の本籍    京都府京都市中京区◯町00丁目     
   の遺産について、同人の相続人全員において分割協議を行った結果
   各相続人が次のとおり遺産を分割し、相続することを決定した。 

    一、日本一郎が取得する遺産及び負担する費用     
     1. 土地       
      所在    京都府京都市左京区◯町○丁目
      地番    00番00 
      地目    宅地         
      地積    000.00 ㎡      
     2. 建物         
      所在    京都府京都市左京区◯町◯丁目 0番0     
      家屋番号  ◯番◯
      種類    居宅         
      構造    木造スレート葺2階建       
      床面積   1階 000.00 ㎡、2階 000.00 ㎡      
     3. 被相続人の未払債務、葬儀費用、墓地管理費用及び祭祀並びに
       遺産整理に伴う一切の費用     

    二、日本花子が取得する遺産    
      預貯金債権、有価証券、その他被相続人の有する全ての金融資産
     1. 預貯金 (1)大京銀行 京都駅前支店 普通口座000
             (2)古都信用金庫 御所支店 普通口座000        
     2. 有価証券 ◯◯株式会社の株式   2,000株   
            その他、□証券会社に保有する端株     

     以上のとおり、相続人全員により遺産分割協議が成立したので、
     これを証するため本書○通を作成し、各自1通を保有する。

        令和5年○月○日                 
          相続人 住 所 兵庫県芦屋市〇◯町〇番地〇
              氏 名 日本一郎      印       
          相続人 住 所 京都府京都市〇〇町〇番地〇
              氏 名 日本花子      印 
              


7. 解説します 
 まず、誰の財産であるか、死亡日、最後の住所地と本籍地を明確にします。
相続人全員が協議して合意したこがわかる文面にします。
そして、作成日と全員の署名と捺印、これが必須記載事項です。 
 次に、遺産のうち、何を誰が相続するのか明確にします。今回は、「誰が」を先にして 書きましたが、分け方によっては、「何を」を項目に立てて書いても内容が明確であれば問題ありません。
 例えば、1.土地・建物はAが取得する、2.預貯金・有価証券・美術品はBに・・といった具合です。 なぜかと言うと、そもそも遺産分割協議書が必要になるのは、先に書いている様に法務局や銀行、税務署であって、それぞれの機関が必要とする「誰が何を」と言うことが明確で、全員の合意があれば書き方の問題ではないからです。 
 まず、土地・建物については、登記簿記載通りに書きます。この順番通りに書いてありますので、転記すれば良いだけです。預貯金。有価証券も同様です。全体財産の把握ができない場合は、「なお、今後、本協議書に記載なき遺産及び債務・費用等が出てきた場合は、等分する」などといった文言を書いておくと安心でしょう。
 これは基本型ですので、これらの他に、信託受益権、出資金、共済・保険契約に関する権利、その他の債権が明確になっていれば書いても構いません。

8. それ以外のことは書かなくて良いのか? 
 士業の中には、「遺言書」を定型でしか作らない人がいるのと同様に、「遺産分割協議書」も定型通りにしか作らない人がいます。すると、不動産・預貯金。有価証券などだけしか記載しない遺産分割協議書になります。
 ところが、区役所などの市民相談会では、「何年も前に弁護士に遺産分割協議書を作って貰ったが、将来、祭祀(永代供養代も含めて)のことをするために記載せずに置いておいた250万円のことで揉めている」などといった、協議書作成から数年以上経ってからの相談が結構あります。
 遺産分割協議書は、確かに、法務局・銀行・税務署等の処理をするために作りますが、同時に、将来の揉め事を防止する役目も果たさなければ意味がありません。
 揉めそうな人がいる場合は尚更、本来は記載しない現金の分け方などの細かい事でも書いておきましょう。
 「そんなものは遺産分割協議書に書く必要はない」と言う専門家。確かに、最低限の仕事をするためには必要ないですし、「えっ? 専門家が作ったのに、何でこんなに細かいことまで?」と、窓口の職員に不審がられるのも嫌でしょう。
 ただし、各相続人は口に出さなくても、案外、「あれは書いてない」と言う意識は残っているもので、自身の役所での評判維持より、依頼者第一の姿勢が優先されるべきと私は考えます。


9. 結論を言います。
 遺産分割協議書に、登記や預金引き出しに関係ないことを書いても無効にはなりませんし、例えば、法務局は、登記に必要な事項が正しく明記されてさえいれば良いのであって、その部分だけを見て他の部分はいちいち詮索しません。
 いちいち詮索するのも、後で思い返してごちゃごちゃ言い出すのも「相続人」なのです。
親が亡くなったら、そんなに頻繁に全相続人が集合することはありません。専門家に高いお金を支払って作成してもらうのに、後日の紛争の種を残す定型の書面では意味がありません。
 専門家に依頼する際は、気になることはしっかり書き残して貰いましょう。当事者が自ら署名し実印をついた内容なら、後日揉めることはほとんどありません。そこに書いてないことを揉めるのです。本当に万全を期すなら、公正証書で作るのも1つの方法です。
 いくら安くても、後日に火種を残す様な書面に使うお金ほど無駄なものはありません。もし、「そんな面倒なことを」とか、「それは必要ない」などと言う専門家がいたら、是非弊所にお問い合わせください。当行政書士事務所では、後日揉めない遺産分割協議書をお作りさせて頂きます。 


©️ 2023 京都太陽行政書士事務所

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