1. 事業承継はリトマス試験紙のようなもの
事業承継で、血縁か価値観かどちらを承継させたいかという質問は、つまり、起業時の想いや理念が本物だったか、子育ての仕方が間違ってなかったかを測るリトマス試験紙のようなものかもしれません。
2. 他所で育つと精神は他所の精神になる
小学生の頃から海外で育った子は、考え方もアイデンティティーも日本人とは芯になる部分がかけ離れているように感じます。私の従兄弟は、叔父の仕事の関係で、小学生の時から海外で暮らしました。たあいない世間話でも違和感を感じる場面はあって、根本的に精神構造が違うと思う時が良くあり、段々疎遠になりました。一般論として、敢えて過激なことを言えば、一番アイデンティティーを育む時期に親から離れ、東京や海外の大学に行った子供は、もはや京都や親の精神を受け継いでいないかもしれません。
3. 精神は連れ合いの思想にも引きずられる
精神が引き継がれないのは、子供が京都以外の大学に入った場合だけに限りません。京都の大学に通っていても、そこで知り合った他県の人を連れ合いにした場合、やはり、その人の育った地域の価値観を京都に持ち込んでくるので、子供はその意見に影響されます。他県の人間にとって、京都の伝統を引き継ぐ意義や歴史の重み、長い取引による信頼の積み重ねなど、京都と他県の違いは知らなくて当然だからです。また、家内安全のために、子供が親より連れ合いの言い分を聞くということもよくある事だからです。
4. 親の苦労部分を理解できない子もいる
さらに言えば、毎日一緒に暮らして、親の背中を見ていても、「毎週ゴルフに言っている」などの表面的なところだけしか見ていない子供もいます。
5. 事業承継で承継したい骨格部分は何か
こういう事例から学べる事は、事業承継を考える場合、我が子に継がせたいと思うのは当然の感情ですが、継がせたいのは血縁なのか、価値観や理念なのかを明確にしておく必要があるという事です。
もし、血縁を優先するなら、「この会社は子供が潰しても構わない、子供を後継者に選んだ自分の自己責任」と思って引継ぎするくらいの覚悟が必要です。以前書いたように、みかんの木にりんごを接ぎ木しているのですから、爆発的に発展する可能性もある反面、信頼を失い潰れる可能性も大いにあるのです。
もし、会社の理念や伝統を継いで欲しいと思ったら、血縁に対する思い入れは捨てるしか仕方ありません。両方を並び立たせると会社が内部分裂するもとですし、承継者も実力を発揮できません。
6. 取引先や消費者も、企業の良い理念を支える力になれる
そして、私たち消費者側や取引先が、その会社の理念が素晴らしいと思い、京都の希少な企業だと思ったら、希少性や良さをその会社の人にきちんと伝えていく必要があり、また、経済的にもしっかり買い支えていく必要があります。会社の経営努力だけに任せていては、外資に乗っ取られつつある京都企業を支えることはできず、事業承継する前になくなってしまうかもしれません。
これからの時代、大切な企業は、地域みんなで支えて守るという意識が必要です。
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