「墓と法事は長男」は揉めるもと

遺言で「財産は平等、墓と法事は長男」は、後日揉める原因になります 投稿記事

 区役所の相談会で最近時々あるのが、「実家の墓や法事は長男(兄)がすることになってたのに何もしないから、嫁に行った私が、夫の墓だけでなく、実家の墓の世話も代わりにしているが、お寺への管理費や法要のお布施など出費も馬鹿にならない。私の子供に実家の墓を継がせるわけにいかないので永代供養にするしかないが、そのお金を私が出さないといけないのか」といった類の相談です。
 当時のお話を聞くと、遺産分割は弁護士に頼んでいたり、自分たちで納得して決めていたり、様々です。
 昔は、家督相続と言って、長子が家や財産を全部継ぐ代わりに、墓や法事、親族の面倒も見ると言う制度がありました。しかし、戦後、この制度は廃止され、何でもかんでも平等にと言うことになり、確かに形式的には平等ですが、実質的には不平等という現実が起こっています。
 墓や法事もその一つです。今の時代、はっきり言ってしまえば、墓や法事は、出費はもちろん、親族に連絡したりお寺と調整したり、飲食の手配をしたりと手間もかかり、持ち出しの方が圧倒的に多く、感謝されるわけでもなく、負担でしかありません。特にお墓が遠い場合、身体的にも負担が増します。永代供養にすればまとまった金額が必要になります。墓じまいするにも、墓石屋さんに撤去費用を払ったり、お寺に供養してもらったり、役所とのやりとりなど手間がかかり、かといって墓地はそもそも借地権だけなので、更地にして返しても1円も戻ってきません。
 「財産は平等に分けて、墓はお前が見てくれ」、と言う相続の方法は、仮に、その時は全員が納得していたとしても、相続人にはそれぞれ配偶者がいて不満を言ってきたり、あるいは年取ってくると、まだ相続権もないのに口出ししてくる子供が仕切ってくることがあります。
 相続を「争族」にしないためにも、せめて、「財産を平等に分けたので、法要や管理費などの負担も平等に分けること」と言う1文を書き加えるか、または、「将来の永代供養や管理費などの先渡しとして、〇〇には100万円を多く財産分与する」と言う類の遺言書を作成するか、あるいは、生前贈与や生命保険として渡す方法もありますが、それを墓と法要の費用として渡していることを遺言書に明記しておかれる方が、後々の安心につながると思います。
 相続人は身内ですから、本来は、寝たきりになった時や入院した時など、互いに助け合ったり協力できる仲でありたいものです。せっかくのそう言う関係を相続で壊すことのなように、遺す側も細やかな配慮が必要です。

©️ 2023   京都太陽行政書士事務所

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